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2022年7月9日に河口湖ステラシアターで開催される、声出し解禁フリーライヴへ向けた真っ白なキャンバス(以下、白キャン)のメンバー個別インタビューは、4月下旬に取材したもので、前日あたりに記事の写真も撮影することになったと記憶している。西野千明さんに「今日、宗像さんが写真も撮るんですか?」と聞かれた瞬間、まだポートレート撮影に苦手意識があった当時の私は「ご、ご、ごめんなさいー!」と言って逃げたくなってしまった。それを西野さんに話したところ、「私がダンスをほめられても苦手意識があるのと一緒ですよ」と笑顔で言ってくれたことには今も感謝している。
ポートレート撮影へ苦手意識を持っている場合ではないと気づかされたのは、5月19日にTumaさんが死んでからだというのは、過去の投稿を見ているみなさんはご存知の通りだ。
白キャンの個別インタビューは、2021年夏の新メンバーオーディション開催時にも行っていた。それから約1年。わかりやすく言えば、B’zの稲葉浩志さんとMr.Childrenの桜井和寿さんへのインタビューを私は経験し、かなり経験値を上げた状態で、また白キャンのインタビューに臨んだ。
私はインタビューの技術論は口にしないようにしているのだが、ひとつだけ白キャンの取材の前に重大な経験をしていた。山下達郎さんの取材の立ち合いだ。その場にいただけで、取材終わりに山下さんと雑談をしたに過ぎない。しかし、その場に立ち会ったことで、私はインタビューに関して、ひとつだけ大きな方向転換をすることになった。「脱線を絶対に恐れてはならない」ということだ。
かくして白キャンの取材は、たとえ話が脱線から始まっても極力修正しない、途中で脱線しても時間の許す限りそのまま進める、なんなら私も全力で脱線に乗っかる、というスタイルで行われた。インタビューをする技術と、それを記事としてまとめる技術は、また別のものだ。公開された記事には、脱線の痕跡はほぼ残っていない。ただ、小野寺梓さんのインタビューの最後の「全人類を救えるように頑張ります」というパンチラインが飛びだしたのは、話しはじめてから約70分が経過した頃だと思う。
プロデューサーの青木勇斗さんが、取材を2日間にわけてはどうかと配慮してくれたのに、私のスケジュールの都合で、1日で朝から晩までインタビューと撮影をし続けた。1日の取材の最多本数にもなったし、疲労のなかで、私にとっての白キャンのもろもろの分水嶺にもなった日でもあった。
そして、白キャンが河口湖で分水嶺に至ることは言うまでもない。
今回は声出し解禁ということで、私が撮った2019年から2020年初頭までのライヴ映像を、白キャンの公式動画でも多く使ってもらっている。過去と未来が交錯する線上に立っていると感じるが、コロナ禍、ロシアによるウクライナへの侵略戦争、そして安倍晋三元首相の銃殺と、私たちが体験する「現在」が、あまりにも長く暗い闇の中にあることも感じざるをえない。