まだ奇跡を起こせるバンドだと私は信じている

松永天馬さんは私に会うなり、「僕が40歳で、宗像さんが50歳になる世界線ですよ!」というようなことを言っていて、私の年齢を把握してくれていたことが嬉しかった。

2022年8月12日、アーバンギャルドの松永天馬さんの40歳の誕生日当日に、渋谷WWWでソロライヴが開催されるということで、バンド「松永天馬と自殺者たち」のギタリストである高慶智行さんにお誘いいただき、会場に足を運んだ。バンド名は「石橋英子 with もう死んだ人たち」から影響を受けているのかな。

会場に着くと、松永さんから楽曲を提供されているキングサリの天神・大天使・閻魔もマネージャーさんとやってきて、終演後に松永さんと閻魔と私で写真を撮ってもらった。私は楽屋に差し入れのドーナッツを持っていったのだが、そもそも松永さんの食生活については「レンジで温めたサトウのごはんが主食」ぐらいしか知らなかったので、アイドへルの差し入れよりもショッピングモールで長考することになった。長考してドーナッツなのだが。

ライヴ中、松永さんの声がきれいだと閻魔が言っていたが、たしかに出会った頃よりも発声が美しい。松永さんと出会ったのは、2009年にアーバンギャルドがアルバム『少女は二度死ぬ』を全国流通させる際に、Bounceの取材を担当したときだ。松永さんと浜崎容子さんは、私が執筆に参加した「『テクノ歌謡』ディスクガイド」を読んでいて、私のことを知っていてくれたことも思いだす。もう13年も前、松永さんが20代、私が30代のときの話だ。

WWWを出てから、いなむらとうさやま、そしてタナカカオリと合流した。彼らとは、アーバンギャルドと出会ってからの13年、ほぼ同じ期間を共有している。あの頃に生まれた子供がもう中学生になるのか……。

このブログに初登場の新キャラであるタナカカオリは、松永さんのファンとして、その道一筋のプロと呼んで差支えない。現在ではタナカカオリより熱心なファンもいるのかもしれないが、私がアーバンギャルドのライヴに足しげく通っていた時代、常に会場最前列には彼女の姿があった。この日も、ライヴの集合写真を見たら、しっかりと彼女が最前列にいた。

タナカカオリは言うのだ。私がアーバンギャルドのライヴに行かずに他を選ぶことはありえない、私はアーバンギャルドはまだ奇跡を起こせるバンドだと信じている……と。熱い。10年以上をアーバンギャルドに賭してきた人間だけが持ちうる重みがある。間違いなくこの夜のハイライトだった。彼女は辛酸を舐めてもまだ耐えるかのようなポーズを決めた。そして、他の3人がちゃんとその姿を写真に収め終わるまで、そのポーズを微調整しながら取り続けた。本人もハイライトを逃さなかった。

タナカカオリは、Tumaさんが死んだときに私が書いたブログを読んで、アーバンギャルドのファンの誰かが死んだら自分がブログを書かないといけないと気づいたとも話していた。年齢順で言ったら誰が死ぬのか……と考えてみると、それはたぶん私なのだ。

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