混ざり合えば楽園

空野青空さんの稀有な個性については、キャラクターの圧倒的な陽光性、他者への共感性が生む配慮の繊細さと厚さ、屈強なまでの行動力とコミュニケーション能力などをまっさきに挙げたい。そう考えると、彼女の存在そのものが現在の成功を呼んだとしか思えないし、実際にそうなのだろう。転がり込んだチャンスをものにできる人間は限られている。見習いたい。

空野青空さんに初めて会ったのは、2017年夏のことだ。当時の私は、渋谷のLOFT9で毎年「TOKYO IDOL FESTIVAL」について勝手にまとめるトークイベントの司会進行をしており、2017年8月9日に開催された「ライブアイドルの現場から2~TIF2017総まとめ編~」の新規出演者として白羽の矢が立ったのが、富山県のソロ・アイドルである空野青空さんだった。その理由が、Twitter越しでも明らかに面白い人物であることが伝わってきたから……というのはシンプルすぎる理由だ。

実際、イベント前に「TOKYO IDOL FESTIVAL」の特典会で初対面した空野青空さんは、ビーチボール2個を胸にあてており、私の頭上に一瞬大きなクレッションマークが浮かんだものの、想像以上に勢いとユーモアをあわせもつ人だった。どんなに他のアイドルに強い好意を示して迫っても嫌味にならないというのも空野青空さんのキャラクターであり人徳だった。要は、他のアイドルにすごい勢いでがっついていたのだが。

空野青空さんとマネージャーの大佐(階級名なので『大佐さん』ではない)のはからいで、2018年11月11日には、石川県の小松THE MAT’Sで開催された「空野青空 Lv.22 Birthday Live!! ~にゃんにゃんフェスティバル2018」にMCで呼んでもらった。私は人生で初めて石川県に行き、北陸の現場の熱気を目の当たりにした。小松駅から我が家への終電は、20時30分に出発しないと終了という早さ。空野青空さんと彼女のお母さん、大佐と会場の片づけをしてから、おとなしくアパホテルに向かった。夜の小松の闇は異様に深く、アパホテルの明かりが希望の光に見えた。幻覚である。

2019年11月27日には、空野青空さんの「Aonyan’s regular Live『#アオネコ超会議』vol.5 ~言いたいことがあるんだよ!SP~」のトークコーナーに呼んでもらった。そこで空野青空さんのディアステージ所属が発表されたのだ。冷静に考えて、重要すぎる場である。2020年1月から、空野青空さんはディアステージに所属し、ARCANA PROJECTでの活動がスタート。アニソンのタイアップという夢をかなえていく。さらに2021年2月にはでんぱ組.incに加入。それを知らなかった私は、新曲「プリンセスでんぱパワー!シャインオン!」で新メンバーが登場した光景を見て「歌いだしが空野青空さんみたいな人だな」と思っていたら本人で、ただただ驚いていた。そりゃ驚くよな。

2023年7月7日に渋谷O-nestで開催された空野青空さんの10周年イベント「#アオネコ超会議 vol.8 ~アイドル十年戦士記念のまき~」に、私はスケジュール上どうしても行くことができなかった。出演者の大半が北陸のアイドルであり、多くが前述の2018年の生誕祭とかぶるという、空野青空さんの驚異的なブッキング力を見せつけるイベントだったのに、だ。

そんな申し訳なさから、空野青空さんの10周年記念インタビューを企画して、大佐に連絡した。ARCANA PROJECTでランティス、でんぱ組.incでトイズファクトリーと、2社のメジャー契約を持っている空野青空さんは、北陸出身のアイドルとして間違いなく出世頭だ。それゆえの忙しさのなか時間を割いてもらった。2023年に公開された私のアイドルへのインタビュー記事は、BiSH、私立恵比寿中学、空野青空さんの3本だけ。気恥ずかしいので本人に言ったことはないが、2018年以降ずっとインタビューをし続けているのは、空野青空という人への敬意ゆえだ。あとは、空野青空さんを真っ白なキャンバスの小野寺梓さんに引きあわせたいんだよな、絶対に合うから……。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/522198e5761cf44d2773787ffe4a5a679ec402f8

https://www.instagram.com/munekata