ポリープ切除のメリー・クリスマス

これは2023年12月上旬、日比谷のクリスマスツリーの前で撮った五味未知子さん。

私はというと、実際にクリスマス・イヴを迎える頃、ようやく旅行の制限が解除されたところだった。誰に制限されていたかというと医師にであり、その1週間前にポリープ切除を受けていたためだった。

11月に受けた健康診断でいくつかの項目に引っかかった私は、気の乗らない検査を受けることになった。大腸カメラである。検査前に「ポリープがあったら、そのまま大腸カメラで切除できるが、その場合は1週間旅行はできない」と説明されており、12月中旬に名古屋で人と会う用事があったので、その後に検査を受けることにした。

まぁ大丈夫なんじゃないかな……大丈夫だといいな……大丈夫かな……という感じで受けた検査でポリープが2個発見され、そのまま切除となった。ポリープのひとつは大きく、切除できた瞬間、医師と看護師は、でかいマグロを釣りあげたかのような雰囲気に。私は安堵しながら、腹部に空気が注入され続ける痛みに耐えていた。

医師からは、ポリープは放置していたら癌になっていただろうが切除したので根治だと説明され、年明けに詳細の説明を受ける受診の予約を入れた。検査前日からは、食べていいのは消化にいいもの、飲んでいいのは水と麦茶だけと指定されていたが、ポリープ切除を受けたので、検査後も当日は消化のいいものだけを食べ、検査後3日間は脂っこいものやからいものは禁止になった。3日間は入浴もシャワーのみ。前述のように、旅行も1週間は禁止となった。

ポリープ切除となると、日帰りではあるが手術を受けたことになり、なんだか弱気になって気落ちしてしまう。人生で手術を受けたことがなかったので、私にとっては珍しい感覚だった。加入している健康保険でも手術扱いで金がもらえるようだったが、さらに気落ちしそうなので先送りに。結局、3日間ほど一歩も外出することなく自宅で過ごした。

先日、名古屋で会った人は「長生きしたくない」と繰り返し話していたものの、私のポリープ切除の話をしたら、彼女も今年、大腸カメラの検査を受けていたという。人間、生きたいか生きたくないかにかかわらず、とりあえず生かされてしまうし、生きてしまうのだ。

私は死にたいとはまったく思わないので生きているが、著書が出るなど、仕事がうまくいっていることが生きるモチベーションになっているかというと、それは関係がない気がする。希望とは、社会的な立場や見え方とはまったく異なる、日々の生活のごくごくパーソナルな部分によって大きく左右されるものではないだろうか。もちろん仕事がうまくいっているに越したことはないので、回復した身体で著書のプロモーションや日々の執筆、編集作業を駆け抜けるつもりなのだが。周囲から希死念慮を告白されると、私はわりと強く引き戻そうとする人間なのだが、自分自身の希望も絶望も、意外と曖昧なところにあるのだなとポリープ切除を通して気がついた。

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