きみのインタビューは引き受けるよ

2024年9月1日、新宿ROCK CAFE LOFT is your roomで「DJ邪悪 a.k.a. 飯田哲司を偲ぶ会」が開催された。2024年7月19日に亡くなった邪悪さんの遺影に供えられたのは、花、酒、煙草、チェキ。その上には、電気グルーヴの石野卓球さんからの花が置かれていた。石野卓球さんは、今回のイベントの開催を知って、わざわざ平野悠さんに連絡して花を贈ってくれたらしい。邪悪さんがあの世で調子に乗っちゃうよ。

邪悪さんと連れ添ったまきさんのご意向で、湿っぽいことは一切なし。我々はいつものようにくだらない話をしていた。新宿ロフトのバーカンの奥の酔っぱらいしかいない空間のように。

邪悪さん以外にも、BiSHの清掃員では最近亡くなった方がいて、セントチヒロ・チッチが「みんなーお化けになっても / たまにはライブ観に来てね」とXに投稿していた。GALFY×GALLIS ADDICTIONのコラボ新作モデルに、カナミルと八月ちゃん、つまりかつてのおやすみホログラムのふたりが起用されたことには、邪悪さんがふたりを再び結びつけたのだと思った。それが事実がどうかはいい。そう思いたいときもあるのだ。

私は邪悪さんの年齢も経歴もよく知らなかった。今年57歳になるはずだった邪悪さんは、56歳で没したという。そして、邪悪さんの過去については、最初期のエイベックス、ヴェルファーレ、ハウス・ミュージック、ジョン・ロビンソンなどのキーワードが飛びだしてきて驚いた。そりゃ葬式にホイットニー・ヒューストンを流されたくないよな。

一番驚いたのは、邪悪さんがB-DASHのマネージャーだったという話だ。聞いてないよ。羽振りが良かった頃は青山に住んでいたものの、夜逃げして駐車場の整理員をしていた時期もあったという。いろいろありすぎだろ。

邪悪さんはいつも私には親しく接してくれたが、他の連中からは邪悪さんとやりあった話も聞いた。邪悪さんは昭和の縦社会の人だったので、古参はリスペクトするし、おやすみホログラムの行けなかった現場に関しては心底悔しがったという。そういうところはTumaさんに似ているなと思ったが、邪悪さんとTumaさんは「JUDGEMENT BOYS」というユニットも組んでいて、その15枚限定Tシャツを着て「偲ぶ会」に来た人もいた。Tシャツにプリントされている写真のふたりとも死んじゃったよ。

仕事終わりのまきさんも来て、「偲ぶ会」も終盤になった頃、ひとりの女の子がROCK CAFE LOFTのドアを開けた。おやすみホログラムのカナミルだった。邪悪さんの遺影をじっと見るカナミルに、うまく言葉が出ない。マイクを渡されたカナミルは、邪悪さんは私のような女はタイプじゃなかっただろうけど、会うといつもいいところを見つけてほめてくれた、と語っていた。そして、何度目かわからない献杯の音頭をカナミルが取ってくれた。カナミルには感謝しかない、邪悪さんは八月ちゃん推しだったのに。

2歳の娘を抱えながら、「将来アイドルになって、このおじさんにインタビューしてもらうんだもんね」と話しかる人がいるから、私も安請け合いしてしまった。2024年11月4日の真っ白なキャンバスの解散とともに、私はアイドル仕事を廃業するので、アイドルライターとしての宗像明将は白キャン解散とともに死ぬのだけれど、ちょっとだけ未来への希望が欲しいから、きみのインタビューは引き受けるよ。

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