俺のハイヤーに乗れよ

2025年の元日の新宿は、人手不足でデパートも軒並み閉店しており、だまされて来日したのかと思うほど、澄みきった青空のもと、外国人観光客が路上を行き来していた。今日、この街はまるで花園神社しか営業していないような雰囲気だ。この日、私は実家で両親と寿司と蟹を食べた後、研究員の新年会の時間まで、去年と同じように喫茶ルノアール新宿靖国通り店で時間を潰していた。iPhoneを充電できるコンセントがあるので、この世のすべてがある感覚になる。

四文屋新宿思い出横丁店は、相変わらず他に行き場のない大人たちで満員。ただ、去年も通されて満員だった3階にはまだ誰もおらず、私たちだけが通された。四文屋でくだをまいて、新宿めだかに移動するのも去年と同じ。新宿めだかで話題になったのは、研究員が男女15人ほどいるのに、結婚しているのがこしきやしかいないという問題だった。子持ちはひとりもいない。少子化問題の最前線すぎる。小池百合子に見つかったら激昂されそうな集団だ。

四文屋、めだか、そして花園神社での初詣と、我々は去年とまったく同じルートを歩んだ。花園神社で集合写真を撮ろうとすると、研究員はまったくまとまらないくせに、階段で「組閣」の写真を撮りたがる。私のおみくじは小吉だったので、そのまま財布に入れることにした。財布には、まだ去年の大吉のおみくじも入ったままだし、未精算の経費の領収書も大量に入っている。今年こそなんとかしたい。

その時点でもう23時近くだったので、例年だったら帰るところなのだが、一部がカラオケに行くと言うので、私も一緒にカラオケルーム歌広場新宿区役所前店へ行った。元日の深夜のカラオケのフリードリンクは、コーラを飲んでも、コーヒーを飲んでも、コーンポタージュを飲んでも味気ない。そこかしこの部屋から歌声が響くのに、廊下は妙に人気がない。そんな空間で一瞬、今後の自分の人生はどうなるのだろうかという命題が頭をかすめたが、忘れるようにした。カラオケで考えるには重すぎて床が抜けそうだ。

午前1時前に解散となり、私は区役所通りでタクシーを拾い、「俺のハイヤーに乗れよ!」と言って、同じく南へ向かうこしきやとなおちゃんを乗せた。こしきやは、この日めだかに現れた瞬間がもっともベロベロに酔っていて、タクシーで帰る頃にはすっかり酔いが醒めて真人間になっていた。普通は逆だろ。

なおちゃんが、私の新著『BiS研究員 IDOLファンたちの狂騒録』を読みたいと言うので、我が家の前でタクシーを降りたとき、そのまま家から見本誌を1冊持ってきてなおちゃんに渡した。近所でシェアサイクルに乗り替えて自宅に向かうなおちゃんの背中を、正月の深夜の物音ひとつしない街で見送った。LUUPではないので笑顔で送りだせる。

日付はすでに2025年1月2日。『BiS研究員 IDOLファンたちの狂騒録』の発売を5日後にひかえていた。私の精神の変調のトリガーが派手に引かれることに、このときはまだ気づいていなかった。

2025年もよろしくお願いします。

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