これまで4冊の単著を出してきたが、プロモーションに関してはすべてが異なる流れを経ている。そもそも、これまでは渡辺淳之介さん、鈴木慶一さん、大森靖子さんと、特定の人物についての書籍だったのに対して、2025年1月7日に発売された新著『BiS研究員』は、2010年~2014年に活動した第1期BiSのファンである「研究員」についての書籍であり、要はオタクの本である。研究員、亡くなった研究員の親御さん、元メンバー、関係者と、多くの人に取材し、人を挟んで連絡することもあったため、『BiS研究員』の取材と執筆は特に秘密ではない状態で進行した。『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』『大森靖子ライブクロニクル』が内々で制作されてきたこととは対照的であり、『BiS研究員』の制作を知った研究員からは「誰が読むんだ」と笑われた。誰が読むんだろうね……。
『BiS研究員』のプロモーションは、2025年1月初旬に行われた、RADIO BERRY『ギュウゾウと一色萌の雷ヘッドライナー』の収録から始まった。電撃ネットワークのギュウゾウさんも、XOXO EXTREMEの一色萌さんも研究員であったため話が早いのだが、ギュウゾウさんはBiSを知らないリスナーにも丁寧に説明をしてくれた。また、ギュウゾウさんと一色萌さんが、一回収録をするたびに「今のは〇点」と自分たちのやり取りを厳しく採点しているストイックさに胸を打たれた。なお、私が何点だったのかは恐くて聞けなかった。
そんな収録の合間、スタジオに貼られている番組のタペストリーがはがれる一幕があった。その瞬間、ギュウゾウさんは嬉しそうな表情でこう言ったのだ。「Tumaが来たぞ」と。
発売日当日である2025年1月7日には、ギュウゾウさんを迎えて発売記念配信トークショーが開催された。この配信トークショーのために、『ギュウゾウと一色萌の雷ヘッドライナー』の収録後、ギュウゾウさんが「最後まで諦めたくない」と告知動画の撮影を提案してくれ、そうした姿勢に私は影響を受け続けている。告知動画の中で、私はどこを見たらいいのかわからない表情をしてしまったが。
2025年1月11日には、リアルサウンドブックスに私のインタビューが掲載された。インタビューは松田広宣さん、構成は橋川良寛さん、撮影は林直幸さん。写真を見てきた林直幸さんに撮ってもらえることは光栄だったが、撮影される側というのはいまだに慣れない。松田広宣さんは、私がライターになった経緯まで聞いてくれたので、うっかり1990年代インターネットの話まで遡ってしまった。気がつけば30年も昔なのだ。
https://realsound.jp/book/2025/01/post-1887881.html
2025年1月28日には、阿佐ヶ谷ロフトAで「BiS(1期)非公式ファンイベントりおーー10年ぶりに阿佐ヶ谷きたよー(°ω°)」が開催された。『BiS研究員』の発売を機に、主催者のおすぎが10年以上ぶりにBiSの非公式ファンイベントを復活させてくれたのだ。おすぎは、『BiS研究員』の取材のためにTumaさんのお母様に連絡をしてくれたり、『ギュウゾウと一色萌の雷ヘッドライナー』のスタッフとしてゲストに私を呼んでくれたり、発売記念配信トークショーに一瞬出てくれたりと、今回大変世話になった。書いているうちに、ギュウゾウさんとおすぎには菓子折りを渡したほうがいい気がしてきた。
非公式ファンイベントは、昔と同様に一切の打ち合わせも台本もなく、Rice&Beerと私が出ることと、オンラインでミチバヤシリオ、高橋正樹さん、Kんさんが出ることだけが決まっていた。さらに、ながちゃんが大量のBiSのTシャツを持ちこんでくれた。要は、研究員が集まって話すだけのイベントなのだが、開催してみれば何十人も来てくれて、本当にありがたかった。こういう場が生まれるきっかけが私であることも不思議な感覚だ。いきなり研究員の本を出すと、いきなり研究員が集まるのだ。
2025年2月4日には、大森靖子さん、MAPAの古正寺恵巳さんを迎えて、新宿ロフトプラスワンで『BiS研究員 IDOLファンたちの狂騒録』刊行記念トークショーが開催された。大森靖子さんは、2024年12月14日の豊洲PIT公演の終演後に会ったとき、彼女から『BiS研究員』の話題を出してくれた。「私がイベントに飛び入りすれば無料じゃないですか」とまで言ってくれたのだが、すかさず横にいたマネージャーの山本さんに「請求書を送りますから」と言われるなどして、正式にイベント出演をお願いする運びとなった。
その後、大森靖子さんが社長を務めるTOKYO PINKに、BiSの元メンバーである古正寺恵巳さんが在籍していることに遅まきながら気づいて、彼女にも出演してもらうことになった。壇上で大森靖子さんが古正寺恵巳さんに「私以上にメリットがないのにどうして出たの?」と聞いていたように、そう、ふたりに特にメリットはないのだ。それなのに出演してくれて感謝に堪えない。大森靖子さんと古正寺恵巳さんのファンのみなさんに、『BiS研究員』というなんだかわからない本を手にしてもらったこともありがたかったし、研究員が古正寺恵巳さんとチェキを撮っている光景も嬉しかった。なお、終了後に知ったのだが、書籍が足りなくなったのか、2人ほど会場に入れなかったという。もし知っていたら、私が紀伊國屋書店新宿本店まで走って買ってきたところだ。
この2025年2月4日、ファーストサマーウイカさんがXに「昨夜研究員とビリーアイドラー達に会う夢を見たよ!」と投稿しており、古正寺恵巳さん経由で『BiS研究員』の送り先を確認してもらった結果、後日無事にファーストサマーウイカさんの手元に届き、彼女のInstagramのストーリーに『BiS研究員』が登場することになった。ファーストサマーウイカさんの夢に出てきた「J?的な謎の居酒屋」とは何なのか? その謎は『BiS研究員』を読めばわかる。むしろどういう本なんだよ。
リアルサウンドブックスに書評を寄稿してくれた南波一海さん、円堂都司昭さん、栗原裕一郎さん、森健さんにも感謝したい。よくこんな本の書評を書いてくれたものだ。
https://realsound.jp/book/2025/02/post-1924381.html
https://realsound.jp/book/2025/02/post-1923770.html
https://realsound.jp/book/2025/03/post-1944939.html
https://realsound.jp/book/2025/03/post-1949291.html
イベントは一通り終了したのだが、私は今も『BiS研究員』をいろいろな人に配っている。友人から「その人にオタクの本を渡すのは、宗像さんにとってリスクがあるのではないか」と言われるような人にさえ渡している。『BiS研究員』は、研究員の仲間たちを描きながら、自分自身が色濃く投影された書籍でもあるので、どうしてもひとりでも多くの人に手にしてもらいたいのだ。その願望は日に日に大きくなってさえいる。
『BiS研究員』のプロモーションを通して、改めて自分が「Small Circle of Friends」の人間だと感じた。つまり、私の周りの小さなコミュニティに深く根ざしている人間だということだ。研究員との10年以上の日々があって『BiS研究員』は生まれ、周囲の支えがあって『BiS研究員』は多くの人の手に渡っている。版元のblueprinのみなさんにも深く感謝している、なにしろ他社の編集者が、この企画が出版されたことに驚いていたからだ。
実は、私は60歳までに5冊の単著を世に送り出したいと考えていた。気づくと単著はもう4冊だ。次の本も「Small Circle of Friends」に根ざしたものかもしれないし、そこから大きくはみ出したものになるかもしれないし、今は先のことが何も予想できない。本当に今後の人生自体がどうなるかわからず、実は深い闇の中であるとも言える。ひとまず、まだ見ぬ誰かに『BiS研究員』を読んでもらえるように活動しつつ、次の単著と私生活に光明を見出だしたい。切実だ。













