17時30分を過ぎてようやく夕暮れが街の影を濃くしはじめた2025年4月上旬、永田町から日比谷へと向かって歩きはじめた。青山通りを皇居に向けて歩くと、左手に見える弁慶壕の石垣では桜が咲き誇っている。内堀通りへと出ると、目の前に広がる桜田壕の風景に、柄にもなく見とれてしまう。写真を撮り続けていると、何度もコバエの渦に遭遇することになるのだが。
東京の中心部なのに人は少なく、歩いているのは日頃から周辺で働いているであろう人と、わずかな外国人観光客ぐらいだ。桜田門へと歩いていると、2本のタワーが空に向けて延びていて、洒落た風情を感じるが、国土交通省と警視庁のアンテナである。桜田門にはやや人がいたが、現在の都心の名所としては、無人に近いと言っていい状況だ。桜田門を過ぎて日比谷壕越しに見る日比谷の街並みも洒落て見えるのは、皇居周辺の建物の贅沢な土地の使い方のせいだろう。たまに行く程度の身には、やはり非日常的な光景だ。
18時になる頃には、水面に小さな波が広がる日比谷壕にも夜の気配が漂いだしていた。そして、日比谷に到着すると、ゆっくりと日常の感覚が戻ってくる。日比谷ステップ広場は人でにぎわい、「Hibiya Blossom 2025」の一環としてフラワー・ドームが設置されていた。フラワー・ドームはうまく50mmレンズに収まってくれないほど大きい。なにしろ中を人が通過できるのだ。
日比谷ゴジラスクエアには大きなゴジラ像があるが、東宝日比谷ビルに入ると、また小さなゴジラ像がある。小さいと言っても2メートルはあり、このゴジラ像を見るのは今年に入ってから3回目の気がする。ビルをエレベーターで昇った先に東宝の試写室がある。この日は映画「#真相をお話しします」のマスコミ試写会だった。
永田町から日比谷までは徒歩で約40分。コロナ禍の2020年から2021年あたりまでは、徒歩1時間程度の距離なら歩いて移動していた。何気なく見つけた坂道などで、東京は美しい街だなと感じることが増えた。この街は一度、焼け野原になってから、まだ80年しか経っていない。
2度のコロナ感染で行動が制限された反動もあり、ライヴの現場に足を運ぶ回数が増え、2025年4月はさまざまな会場に行った。国立競技場、東京ドーム、さいたまスーパーアリーナ、横浜アリーナ、日比谷野外音楽堂、KT ZeppYokohama、渋谷Spotify O-EAST、渋谷CLUB QUATTRO、浜離宮朝日ホール、渋谷Spotify O-WEST、Billboard Live TOKYO、表参道WALL&WALL、代官山 晴れたら空に豆まいて。私のSNSを見ている友人には、ライヴに行っている回数の多さに驚かれる。私はまだまだ現場性を帯びていたい。
こうして歩き回っていると、ずっと春でいいのにと切実に願ってしまう。そんな願いもむなしく、もうすぐ全身の血液を煮るかのような夏が来てしまうのだろう。正直なところ、夏フェスはもう無理である。
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