サッカーじゃないんだよ

誕生日に予定がないと憂鬱だと話したところ、「だったらみんなでお祝いすればいいじゃないですか」というようなことを言ってくれたのは、ふたたびあおだった。

そんなわけで、53歳の誕生日当日である2025年7月15日に向けて、私は自分の誕生日パーティーをセッティングすることになった。渋谷のちょっといい居酒屋の個室を借りただけだが。

当日、あおの時間が空いたというので、ふたりで渋谷のカフェで落ち合ったのだが、そのときの私はひどい靴擦れに悩まされていた。その1週間前の2025年7月8日に、能登半島地震と能登半島豪雨の二重被災地である石川県輪島市の町野地区を訪れたのだが、帰宅してみると左足の靴底が剥がれかかっている状態に。町野地区には舗装などがひび割れたままの場所もあり、予想以上に靴がダメージを受けていた。

すぐに同じメーカーの同じ靴を買ったのだが、左足だけひどく靴擦れしてしまい、かかとの皮が剥がれてしまうなど、気が遠くなるほどの痛みをもたらした。誕生日当日は「バンドエイドキズパワーパッド靴ずれ用」の世話になりだしたところで、翌日からはビーチサンダルを履き、数日後には人生で初めてクロックスを買うことになる。人類はなぜまだ靴擦れを克服できないのだろうか。

あおと私ときたら五味未知子にも当然来てもらい、五味ちゃんが会いたいと言っていたのに、さっぱり会いに行かない育実にも来てもらうことにした。問題は、誰が来るのかを私が誰にも話していたかったことだ。五味ちゃんに育実が来ると伝えたところ「緊張する」と言いだし、やってきた育実には「ほかには誰が来るの?」と言われたので、これだけだと言った。正確にはなげきさんも来るのだが、もうちょっと盛大にやるイメージだったのかもしれない。

五味ちゃんとあお、育実が初対面する光景は初々しく、あおと育実がディープなヒップホップの話で意気投合する意外な展開もあった。喫煙の個室だったので、五味ちゃんと育実の紙タバコの煙で、向かいにいるはずのあおの顔も見えなくなってきた頃、なげきさんがやって来た。NUANCEのライヴから回してきたのだ。

私とNUANCEのどちらが大事なのか。そりゃNUANCEだろう。ここ最近は、なげきさんややじといった研究員がNUANCEのライヴに行くようになっており、NUANCEから足が遠ざかっていることがうしろめたい私は、彼らを応援することで、せめてもの贖罪としていた。最近はfav meを見るだけで、アイドルに関するリソースが枯渇していたのだ。

育実が一足先に帰ったあたりから、五味ちゃんの泥酔が加速し、あおとなげきさんが五味ちゃんの体勢を戻そうとしたところ、五味ちゃんは掘りごたつに落ちそうになり、その頭を私の足先がキャッチした。サッカーじゃないんだよ。

泥酔した五味ちゃんをタクシーに押し込んで解散。寝転んでiPhoneをいじる五味ちゃんを、なげきさんは今泉力哉監督作品のポスターのようだと評していたが、なんでもサブカルに変換すればいいというものではない。いいというものではないのだが、私は53歳はサブカルとして生きたいと考えていたところだった。大仕事を任せてもらう機会が増えたが、自分のルーツがサブカルであることを忘れてはいけないと強く考えるようになったのだ。ルーツを忘れた人間は堕落する。自分を強く律しながら広くカルチャーを捉えていきたい。

53歳もよろしくお願いします。私は年齢をあえて書くことでエイジズムに抗いたい。

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