全身の細胞が茹であがりそうな暑さの続く2025年8月下旬の夜、五味未知子と新宿の喫煙可の喫茶店で落ちあい、彼女の様子がおかしいことを確認してから、我々はピザを食べに行くことにした。食事を終えると、五味ちゃんはシーシャが吸いたいと言う。様子がおかしい五味ちゃんがそう言うのなら……と私は初めてシーシャ屋に行くことにした。店の名前は「めいどシーシャchocolatplanet」。その日は不在だったが、育実のバイト先である。
それにしても驚いたのは、chocolatplanetの立地だ。新宿歌舞伎町の区役所通りにある風林会館の斜め向かいのビルに店を構えている。私が若い頃は、風林会館の一帯はヤクザのシマとして近寄ってはいけない雰囲気が漂っていた。実際、パリジェンヌ事件が2002年、石原慎太郎による歌舞伎町浄化作戦が2003年なので、そう遠い昔の話でもない。
思わぬ形で風林会館の中に初めて入ったのは、2013年1月27日の深夜。女装ニューハーフイベント「プロパガンダ」がオールナイト開催され、そこにBiSが出演したからだった。頼まれてもないのに研究員が女装して集合し、興が乗った者は撮影コーナーで写真まで撮ってもらっていた。やる気がありすぎだろ。
その夜のBiSは、インフルエンザの猛威を受けて、出演できたメンバーは5人中3人のみ。しかもライヴ中に音が止まり、渡辺淳之介さんは脱いで間をつないでいた。エイベックスのディレクターだった越智竜太さんは女装子に口説かれ、取材中の山田秀樹さんはバドワイザーコスチュームを着ているなど、歌舞伎町の治安が以前より落ち着いていることを実感させる夜だった。拙著『BiS研究員』にも書いていない、どうでもいい情報をどんどん思いだしてしまうな。
それから12年が経過した。chocolatplanetに着いた我々を迎えたのは、意外と落ち着いた雰囲気。シーシャの器具はでかい。シーシャを吸って、煙を大量に吐きだす五味ちゃんを眺めながら、私はコーラを飲み続けていた。シーシャを吸う五味ちゃんの写真を育実に送ると、当然ながら「いる時来てよー!」とのことで、彼女が出勤する1週間後にまた我々はchocolatplanetを訪れた。五味ちゃんの様子はおかしいまま。人生、いろいろあるからね。
2回目のchocolatplanetでは、定番の落書きオムライスを注文し、「決まった……」と私は内心で酔いしれた。育実はケチャップで五味ちゃんの似顔絵を器用に描く。育実はかなりの時間をかけて、五味ちゃんのためにシーシャを作っており、丹精を込めていることがうかがえた。五味ちゃんがおいしいと喜んだので、彼女の精神が一瞬戻ってきたことがわかった。
マウスピースを渡されたので、私も2口ほど吸ってみたところ、甘く淡い味がしたが、どういう味わい方をしたらいいのかよくわからない。私は煙草も吸わなければ、この間30年ぶりに飛行機に乗ったという、やらないことは全然やらない人種なのだ。極端すぎることは自分でも理解している。
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