これは2021年5月のひかる。この時期のひかるは、約2年半いた世界から離れていた。そして、この写真を撮った2か月後、元いた世界へと戻ることになる。これは、まだそんな展開を本人も私も予想もしていなかった頃の写真だ。たぶん彼女の居場所は、あの世界で正しいのだ。
この時期、私たちは写真をたくさん撮っていたので、彼女は私が人生で2番目に多くの写真を撮った人物になった。それを本人に伝えたら「重い」と言われた記憶がある。
ひかるの写真は、どれを世に出すかを必ず彼女自身が選ぶ。その結果、日の目を見たのは全体の1%程度。私の写真の腕前を考えれば妥当な線だと思う。そして、そのほとんどが現在は見ることができない。でも、ひかるの好きなようにするのが一番良いと思う。そもそも、撮った写真のすべてを世界に発信する必要はないし、私たちは別に映える必要もない。
ひかるは、私が人生で出会ったことがないタイプの人だ。大きな目で平然と私の心の奥の奥まで見透かしてしまう。私は彼女に「これ以上、心の中を読まないで!」と言ってしまったことさえある。しかし、気まぐれで、鋭くて、それでいて他者に寛容な彼女の優しさに何回も救われてきた。赦されてきた。立場に関係なく、ひかるに接したことがある人たちは、みんな同様の経験をしていると思う。
ひかるは気分屋なので、彼女の手にかかると、今この瞬間はすぐに過去になってしまう。平たく言うと、いろいろなものがSNSから消える。記録は失われていく。でも、彼女が未来を紡いでいくのならば、それでいいとずっと考えている。
すぐに気が変わってしまうことに、一番振り回されて葛藤しているのはひかる自身だろう。たぶん彼女は物事が見えすぎてしまう人だから。ときにひかるから醸しだされるヒリヒリした感覚は、いつも私に「生」を教えてくれる。
ひかる、お誕生日おめでとう。その世界で苦しいときもあるだろうけれど、きみに出会う必要がある人たちが、この世界にはまだまだたくさんいるはずなんだよ。