マイ・ファースト・コロナ

2023年8月、お盆真っ盛りに、遂に私もコロナに感染した。2020年春にコロナ禍が日本を襲ってから3年以上、周囲から呆れられるほど神経質に過ごしてきたが、あえなく陥落である。これまでの8つの波はなんとかやり過ごしてきたものの、手洗いもアルコール消毒も二重マスクも、今回は無力。第9波には太刀打ちできなかった。

コロナに感染した場合に関して、ひとつだけ決めていたことがあった。周囲に謝らない、ということだった。感染した人が謝罪する風潮はおかしいと感じていたからだ。ただ、当然のように取材にも影響してしまい、仕事に関係する人たちには謝ってしまった。事情を話したとき、謝らずとも許してくれた友人たちに感謝したい。感染したと推測される時期に長時間一緒にいた人たちにも、発熱したらすぐ病院で受診してほしいと連絡して回った。

また、京都大学の西浦博教授らが開発・運営している感染者情報収集サイト・メタコビに、罹患情報を入力した。感染に備えて、アカウントはすでに作っていたのだ。
https://covid-data.jp/

そもそもは、お盆の初めのある日、午前4時頃に寝ようとしたところ悪寒がした。起きても熱っぽかったら病院に行こう――と寝たところ、真夏なのに羽毛布団をかぶるほどの寒気を感じ、4、5時間程度しか眠れずに、休日診療所を探すことになった。

起きたときの体温が36.8度だったことを休日診療所の看護師に話すと、コロナ検査は不要なのではないかという意見だったが、そこは白黒をつけたいと頼みこんだ。かくして、ベランダにぽつんと置かれたパイプ椅子に座り、鼻に棒を挿入されることになった。

お盆の休日診療所は混みあい、待合室は発熱者とそれ以外にゾーニングされており、発熱者ゾーンはなかなかの盛況だった。待つこと1時間半、ようやく診察室に呼ばれた。医師に「どんな症状ですか? あ、コロナ陽性です」とあっさり言われ、自分自身がコロナを疑って受診したのに、想像以上にショックを受けてしまった。発症から半日足らずでの陽性確定である。

私はこれまでにワクチンを6回接種しており、そのことを医師に話すと、それなら大丈夫だと思うが、まだ発症初日なので悪化する可能性もある――と言われ、1日分のロキソニンが処方された。また、「補中益気湯」という漢方薬を買って帰るといいと言われたので、どんな効果があるか把握しないまま補中益気湯を買って帰路についた。

38度程度まで発熱していると、ベッドに横たわることと、水を飲むことしかできない。時間の流れが曖昧になり、澱んだ時間の渦のなかで、2日目の昼を迎えた。すると、寝続けていたことが効を奏してか、体温は徐々に平熱に。ただ、寝すぎたせいなのか、身体を動かすと腰痛のような痛みがある。平熱に近づき、ようやく畳の上で寝転がれるようになると、不思議と身体の痛みが和らいだ。

3日目にはすっかり平熱で、Uber Eatsで頼んだマクドナルドを食べてみたのだが、味覚障害に遭遇することになる。具体的にはバーガーの牛肉の味がしない。ポテトフライの塩味が異様に強く感じる。しかし、逆に言えば問題はその程度。仕事柄、コロナ後遺症のなかでもブレインフォグをもっとも恐れていたのだが、ワクチン6回接種の強力な効果によって守られていることを実感した。

4日目にはほぼ日常に戻り、音楽を聴く余裕が出てきた。病みあがりのビル・エヴァンス・トリオが心身にしみる。5日目もまだ味覚に違和感があったが、6日目に牛肉の味が復活したときには少なからず感動した。

前述したように、6回接種したワクチンは強力に私を守ってくれた。ヘッダー画像には、補中益気湯、ロキソニン、タイレノールが写っているが、実はどれも飲むことなく乗りきれた。昨年の夏からは、感染に備えて「inゼリー エネルギー」などを多く買っていたのだが、それを飲むことはなく、普通に食事ができる状態だった。ワクチン接種の機会があれば、ぜひ接種を検討してほしい。

医師からは、コロナはすぐにうつるので、5類移行で法的根拠はないが、5日間は誰にも会わないでほしい――と求められた。発症当日を0日目とするカウント方法も参照にして、6日間まったく誰にも会わない日々を過ごした。7日目はマスクをして外出する予定なので、体力が持つか不安なところだ。そんな不安と安堵をともに抱えつつ、このブログを記している。