私という触媒

やはり人は、物が見えすぎるとつらいのではないだろうか? ある程度の鈍感さがあったほうが生きやすいのではないだろうか? 15歳のシンガーソングライターである「だでぃが」へのインタビュー原稿を読み返して、人前に出ることもない15歳を過ごした私は、そんなことを考えてしまう。でも、だからこそアーティストなんだよな。

2023年1月中旬、だでぃがにようやくインタビュー取材をした。2022年12月頃から、私はちょっと洒落にならないほど忙しくなっていたのだが、そんなことを言っているといつまでたっても彼女にインタビューができないと腹を括り、だでぃがの予定を押さえた。なぜこの日だったのかというと、超大物と表現して差し支えない方に私がインタビューする日であり、その後だでぃがにインタビューをすると縁起が良い気がしたからだ。験を担ぐ電撃ネットワークのギュウゾウさんの影響で、私も芸能は縁起を担いだほうがいいと考えているのだが、冷静に考えて触媒が私というのはどうなのだろうか。

我々は雨上がりの新宿の路上で周囲に人がいるのもかまわずに撮影をした。だでぃがは中学生ということで、学校への配慮で顔を全面的には公開していない。しかし、話を聞くと校長先生までだでぃがの活動を把握しているらしい。顔を出さない意味、そろそろ失われていないか?

この翌日、だでぃがは初めての大阪でのライヴをひかえていた。私の取材を受けた後に、彼女が向かったのはバスタ新宿。夜行バスで大阪へ向かうのである。夜行バスといえば新宿駅西口というイメージだったが、いつの間にか新宿駅南口の上部に移動していた。夜でも市場のような賑わいだ。大荷物の人々のなかで、一眼レフ以外の手荷物を持たない私が浮いていた。

それから1週間後。ミームトーキョーのワンマンライヴで、だてぃがが作詞を担当した新曲「SNSKILLER」が初披露された。彼女にとって初のメジャー流通楽曲だ。終演後、プロデューサーのもふくちゃんとYGQさんから、私が先回りしていることを指摘された。だでぃがともふくちゃんの初対面を見守っていたところ、だてぃがが私について「父親ヅラする! 本名の下の名前で呼ぶ!」と言い、もふくちゃんが「キモいって言っていいよ!」と盛りあがっていた。触媒となるのも悪くない。

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このテキストを2月上旬に書いてから、約2週間が経過した。完成したインタビュー原稿は諸般の事情でまだ公開には至っていない。そして、先日遂に忙しさのピークを乗りきった。正月もなく原稿を書き続け、久しぶりに原稿に追われない日々を過ごせるようになったのだが、以前はどう過ごしていたのかをさっぱり思いだせない。そんなわけで落ちつかないので、このテキストを書き直している。

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